2011/10/29

その男凶暴につき

この映画で演劇的な要素を担うのは脚本だけ。「組織に見放された狂犬同士の決闘」というラストがきちんと用意されている。
しかし、そのラストに向かうまでの描写は、

爽快感のないリアリスティックな暴力
次のシーンへ移る、或いは移る直前までをわざわざ映すことによるゆったりとしたテンポ

というHANA-BIまでの北野映画を特徴付ける抑えたスタイルによって成り立っている。

このようなスタイルがデビュー作から顕在化しているのは、おそらく、たけしの突っ込み気質や報道で耳にするシャイな性格が、自分が監督する映画に気恥ずかしい「映画的リアリズム」の導入を許さなかっためだと思われる。
例えば、途中で容疑者と刑事が殴り合いをするシーンにしても、殴り合いと言うよりもみ合いで、その前のシーンで「映画風」なアクションを試みた刑事はあっさりと殴り倒されている。
結局、演劇的な派手な殴り合いなんて町中ではまず見られないわけで、だからアクション映画が商売になるわけだが、たけしにしてみれば嘘くさいシーンにしか見えなかったのだろう。

「映画的な暴力が乏しい暴力映画」といえば一足先に松田優作が「野獣死すべし」と「ア・ホーマンス」で試みている。残念ながら彼にはその描写を洗練させるだけの時間が無かった。
映画的でない暴力映画の先達として「フィルムノワール」が存在することを考えれば、たけしが松田優作の後を引き継いだのは偶然だったのかも知れないが、「バタ臭くない和製フィルムノワール」が誕生するにはたけし自身の資質が必要だったとは思う。

その男、凶暴につき(Wikipedia)

と、ここまで書いて「その男、凶暴につき」をぐぐってみたら、素晴らしい評論を見つけたので、この辺で書くのは止めようと思ったりする。

浮気なシネ漫歩

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2011/09/20

時代に即しすぎて悲しい映画

嫁さんの趣味で森田芳光の「家族ゲーム」を久々に見たが、演出が古臭いのに驚いた。
松田優作の新境地がメジャーになった映画として記憶されるべき映画なので、演出が古臭いと感じてしまうのは彼のファンとして困るんだが、残念ながら40始めの人間にしてみると話題になってしまったが故に、フォロワーにしゃぶり尽くされたこの映画の「間」と「外し」がひたすら恥ずかしい。

ただ、「それから」を撮った後に「俺との仕事がしんどくてとんねるずに逃げやがった」と松田優作に冗談めかして非難されていた森田監督のその後を思うと、自らのスタイルと突き詰めるほど演出的体力は無かった人なんだろう。

もっとも、自分のスタイルを緻密に構築し続ける贅沢が許されて且つ「演出的体力」がある日本人監督って北野武しかいないか。20世紀末から21世紀初頭にかけては。

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2011/07/03

板尾で笑ったら罰ゲームか?

電人ザボーガー公式サイト

何気にMXテレビを見ていたら、電人ザボーガーの再放送が流れた。それはよくある話なんだが、放映後に映画の宣伝が。
板尾創路主演で「ザボーガーのその後」を描いた映画が作られたそうで。再放送は公開タイアップ企画だとか。
日本の特撮ヒーローのメジャーどころはウルトラマンにしろ仮面ライダーにしろ、子供向けシリーズとしては現役故に営業に悪影響が及びそうな「悲惨な老後」を描くのは多分タブーだろう。
それにあんなに「兄弟」がいれば孤独な老後なんてことはないだろうし。
そんなわけで、「ゼブラーマン」みたいなオリジナルヒーローでなければ日本で「ダークナイト・リターンズ」が出来ることはないだろうな、と思っていたら、条件に合うヒーローが掘り起こされてしまった。
しかし板尾創路という人選はかなりのハイセンスだよなあ。

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2011/01/03

謹賀新年

明けましておめでとうございます。
自分もネコも寝正月な元旦でした。

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2010/12/13

40年遅れの一発屋

「人間」ヒトラーと向き合うドイツ(NewsWeek)

Philippe Mora(Wikipedia)

ビデオ・バブル時代に「クズ映画の監督」として名を馳せたフィリップ・モラが意外なジャンルから意外な形で復活。また名前を聞くとは思わなかった。しかも、こんな真面目な記事で。彼の名前を聞いたのは10年ぶりくらいかも知れない。

90年代に入っても映画仕事はしていたから業界的には手に負えないほど下手な監督というわけでもなかったらしいが、それが災いしたのかどの作品もNewsWeekが言うほど「カルト」ではない。クズではあったが映画史的に「汚点」となるほど強烈なものはない。要するに単なる「出来の悪い映画」なので、本来ならばその他大勢の職人監督と共にアナログフィルムと同じくらいの速度で消えていくはずだった。が、大逆転。

彼に関して誰もが首を傾げたのは「クズ映画ばかり作るのにスタッフや俳優はいつも一流どころ」という点で、逆に言うとウリはそれだけだったが、キャリア前史でどんな俳優よりも名を馳せた人物を扱った経験が、、、関係ないか。それよりも、1973年の段階でカンヌ映画祭に参加していたから、その辺りから人脈を作り始めていたってことなんでしょうな。

この映画が引き起こした騒動を読むと、彼のフィルモグラフィーやバイオグラフィーに食指が以前よりは動くが、「ハウリング」シリーズのことを考えるとその調査にあんまり労力を費やす気は起きない。
試しにWikipedia英語版で彼の名前を検索してみたら見つかったが、おそらく彼の名前を、その他の作品を知る者としては不本意ながら映画史に刻んでしまうであろうこの映画のことは載っていない。しかも、映画監督のテンプレにも従っていないので大変に読み辛い。そのうえアマチュア時代のフィルモグラフィーや家族のことばかり詳しいという妙なバランスで成立している。ひょっとしたら本人が書いたんじゃないか?

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2010/10/11

いまさらサシャ・バロン・コーエン

故あって「ボラット」(Wikipedia)と「ブルーノ」(Wikipedia)の両方を立て続けに見ることになったが、作品としてはボラットの方が普通に笑える。
理由は簡単で、ボラットの方が伝統的な「カルチャーギャップを笑う」というコメディの文法に則っていて、ブルーノは命がけの嫌がらせを撮影することに主眼を置いているからだと思う。

ボラットは「モキュメンタリー」(Wikipedia)という言葉から連想される「どっきりカメラっぽいことをして素人が驚くところを撮って笑わせる」というイメージとは裏腹に、かなり細かいところまで気を遣って製作されている。

冒頭部分で部屋の中でカメラがパンすると牛が映って驚かされたり、自動車を馬が引いていたり、夫が乗った荷車を妻が引っ張っている場面を村の風景にさりげなく映し込んで仮想カザフスタンの男尊女卑をアピールしたり、ニューヨークのユーモア講師に教わったギャグがラストに出てきたり、途中でどうやってカリフォルニアに行くのかと思わせておきながら意外な方法で辿り着いたり、相棒のアザマットが冷蔵庫を開けるといつの間にかいなくなっていた熊の首が一瞬映ったりと、伏線と思わせない伏線をきれいに回収していく。
さらに途中でボラットがアメリカの住民と交わす会話は「男尊女卑と差別主義が蔓延っていて野蛮」という設定の仮想カザフスタンと「先進国」であるはずアメリカの住民に大した差はなく「先進国」の人たちはパーティジョークやテーブルマナーで単に上辺をごまかしているだけ、という批評が自然に成り立つように構成されている。
加えて、本来行くはずじゃなかったカリフォルニアに向かう、という設定を入れたことで「水曜どうでしょう」を思い出させるバディムービー的な「くだらない仲間同士のやりとり」で笑わせる場面もうまく混ぜ込んでしまう。
要するにジャンル横断的なコメディとして成立させてしまっているので、サシャ・バロン・コーエンのコメディに対する懐の深さが実感でき、だから面白い。

だから「どっきりカメラの面白さ」を期待してボラットを見るとおそらく外すんだけど、この映画の一要素に過ぎなかったフェイクドキュメンタリー部分が評判になりすぎて、続く「ブルーノ」の内容を制限してしまった感じはする。

ブルーノはひたすら「過激などっきりカメラ」であり続ける。問題は「素人を驚かせたり怒らせたりするには嫌がらせをすればいい」というこの手のギャグ特有の「沸点の低さ」で、結果的に「やってることは凄いんだけど、どれも似たようなもので映画としては単調」という労力に見合わない仕上がりになってしまう。
ハシディズム派の服装(ユダヤ教というと思い出す黒い服)をノースリーブと短パンにアレンジして歩き回って追いかけられたり、アメリカ南部の真っ直中で開催されたバーリ・トゥードの金網の中で男と乳繰り合いをしたりするギャグは確かに命がけで凄いんだが、ブルーノがそういう場面に登場した時点で「こうなるな」という予測は出来る。

結論としてはボラットの方が面白い。ボラットはDVDを購入してもいいが、ブルーノはレンタルでいいや、という感じか。
ついでにいうとBOX Officeによればブルーノボラットの3倍近い制作費をかけながら興行的にはボラットの方が成功している。「ゲイムービーは見たくない」という客も多いからではあるんだろうが、やっぱり「ドキュメンタリーの形を取ったコメディ」と「コメディタッチのドキュメンタリー」の差もあるんじゃないだろうか。嫌がらせみたいなドキュメンタリーの方が支持されるのであれば、野呂圭介は未だにスターでいるはずだしね。

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2010/06/01

真似の出来ない経歴

そういえばイージーライダーではデニス・ホッパー演じるビリーは死んでいない(ように見える)。
なるほど、おそらく怪我をしてバイクに乗れなくなって川縁に住み着いた彼のその後を描いたのが「リバースエッジ」だったのか。だから足を引きずっているんだなあ。
で、更に時代は下って人類滅亡に乗じて男の夢を実現したのが「ランド・オブ・ザ・デッド」だったわけね。

ゲーム界にも輪廻転生してたよなあ、クッパ大王。そのうえ全米1位の映画を監督してたりする(カラーズ)。こうしてみるとやはり偉大すぎる経歴だ。オーソン・ウェルズと双璧くらい。

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2010/05/31

河よ流れよ、流れて俺を連れて行け

型破りで気ままなイージー・ライダー、デニス・ホッパー死去 (AFPBB)

自分くらいの世代だと「イージー・ライダー」よりも「ブルーベルベット」と「悪魔のいけにえ Part 2」だよなあ。

語り始めるときりがないので書かないが、どこかで追悼上映でもしてくれないか。

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2010/05/25

ヤンキーにも人気ありました(紫だから)

なぜかNHK衛生第2でパープルレインを放映していて最後まで見てしまった。
しかし小さいハーレーだな、これって本当はどこのメーカーだろう、、、ということとともに今更思ったのは、エミネムの「8マイル」は21世紀のパープルレインだったのだなということ。
両方とも五大湖周辺の地方都市が舞台ってのは偶然だろうが(パープルレインはミネソタで、8マイルはミシガン)、あんまり環境のよくない家庭に育ったミュージシャンが勝ち抜きバンド合戦で勝利するというストーリーは全く一緒。
もっともぷー太郎同士のディス合戦が繰り広げられる8マイルと、曲がりなりにも一応ギャラをもらっているハコバンのレギュラー争いだと後者の方が大人の味わい。
家庭の崩壊っぷりもDV花盛りではあるものの一軒家もあれば両親もいるプリンスに比べると、親父は行方不明で母親はといえばトレーラーに同級生やら先輩やらを引っ張り込んでいるエミネムは崩壊寸前じゃなくて立派な崩壊家庭。
2つの映画の間に横たわる20年の間にアメリカってのは貧乏になったんだなあ。でも両方の勝利は泣きたくなるくらいにスケールの小さいもの、ってのは共通、、、いや8マイルの方が仲間内の悪口合戦で勝ったくらいの更に小さいスケールか。だから逆に胸に迫る、という部分はあるが。最後に仲間内でだべりながら帰って行くところなんかいいよなあ。

それと映画館で見た当時は分からなかったけど、プリンスが出演しているクラブの、、、いや、当時はライブハウスか、、、オーナーがジャージの上下に帽子を被ってゴールドアクセサリーを身体の各所に散りばめるという格好をしている点。
これって最初期のヒップホップ系ファッションだよなあ、と思って調べてみたら、パープルレイン公開年とDef-Jamの登場は同じ年だった。
目立たない形ではあるものの、何気にブラックミュージックの過渡期が映し込まれている映画でもあったんですな。だから8マイルとも繋がっている、と。「大叔父の孫と自分」くらいの薄い繋がりかも知れないが。

殿下はその後、色々あって一回りしてRave Un2 the Joy FantasticやらMusicologyでこの頃くらいの必殺フレーズを思い出したように繰り出してきた時期もあったけど、個人的には懐かしいだけで1回聞いたくらいだった。
だからパープルレインも似たようなもんだと思っていたら、今聞いても結構面白かった。完成度としては後年の2作の方が上のはずなのに、この差はどこから生まれるんでしょうなあ。創作って言うのは難しい。ただ、今聞いて一番面白いのはThe Timeだったりするが。ウェンディ&リサはたまに消息を耳にするけど、Wikipediaを見る限りでは彼らもたま〜に姿を現すようですな。
そういやこの年のグラミー賞ではこの映画のラストをほとんどそのまま再現したライブパフォーマンスを見せていましたな。殿下の「I feel for you」のカバーをヒットさせたチャカ・カーンがグランドマスター・フラッシュと一緒に出ていたのはこの年だったか翌年だったか。

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2010/05/17

結論はいつも「数十年先」

東京に来てからJCOMと契約してディスカバリーチャンネルばっかり見ている今日この頃。
今のところカク博士のSF研究室と噂の伝説バスターズがお気に入り。
SF研究室のように「SF映画に登場するガジェットは実現できるか」という番組は結構あったんだろうが、この番組で気に入っているのが三流SF映画のバンクフィルムが流れるところ。

メジャーどころと違ってタダ同然で使えるからってのもあるんだろうが、MITやらコロンビア大学の研究室に出かけていって最先端の研究を実施している研究者と対等に話し合う池田鉄洋に激似のカク博士(Wikipedia)の姿に続いて、吊り宇宙船がふらふらと飛ぶ映像を流すセンスは大変にイカしている。

ローカライズも手抜きせずに、そういう映像にもちゃんとした、しかも他の場面では出てこない声優で声を吹き替えていて「そこだけ英語になって冷める」ということがない。特にロボットの回でLEDどころか白熱灯を使っているようなロボットにもちゃんと日本語で喋らせていたのには結構感動。子供が出れば子供の声でちゃんとアテてるし。

しかし、同時にこれがSF映画の原風景だよなあ、と思ってしまう。
スターウォーズとエイリアンで大メジャー化したSF映画だが、両方とも元ネタはこういう映画たちだし、使ってるガジェットは似たようなものだからなあ。

あ、でも、ライトセーバーは実現できるか、という回では流石にスターウォーズの映像を使ってましたけどね。

ちなみに噂の伝説バスターズでは、途中から本来の目的とは微妙にズレていく過程が面白い。それはもう噂の検証じゃなくて単なる爆破威力の計測じゃないかって具合に。

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