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2016/06/03

Sometimes Like This I Talk


Wikipedia

(2016年7月23日、このアルバム製作の背景などがある程度はっきりしたので全面改定)

以下は本作のブックレットから。

“2003年にコーチュラでストゥージズが復活したが、私は、自分を一足先に復活させてくれた新世代のミュージシャンたち、スコット、カミール、そしてRadon Emsenblesの面々と一緒にポートランドからポルトガルに飛んだ。まあ、彼らに発見されなくても私が生きていることくらいヴァイオレント・ファムズはちゃんと知っていたがね!
いくつかのトラックは"Michigan and Arcturus"(Radon)や"Tunnel Diner"(Qbico)といったリリース済みのものと同様に、ストゥージズのツアーやレコーディングの合間合間に(ありがとう!ジム)行われた、これまでの全てのセッション(クレジットを見てくれ)から構成を練り、歌詞を添えた。その結果がこのコラボレーション集だ。この作品に関わった全ての人々と妻(最高の友人で、私のボスだ!)に心からの感謝を捧げる。

自分は間違いなく神に祝福された幸運なサックス奏者だ。グランド・ラピッズ出身の小僧にしては、悪くないな。

2010年7月
フランスのどこかのホテルで
スティーヴ・マッケイ"

スティーヴ・マッケイの3ndソロアルバム
このアルバムをリリースした時期のマッケイのバイオグラフィーは、僭越ながらこちらを参照していただきたい。

スティーブ・マッケイ バイオグラフィー(6)

上記イメージはアナログ盤のジャケットで、CDはこの真ん中を斜めに切り取ったようなデザイン。

前作”Michigan and Arcturus”はストゥージズ再結成前の音源で構成されたもので、いわばマッケイとアヴァンギャルド系のRadonレーベル人脈との付き合いの記録であり、そうなればアヴァンギャルド、フリージャズの色が濃い内容になるのは当然
そういうわけで前作を聴いてマッケイ本来の資質はそういうものだと思ったうえで本作を聴くと、ブルース色が濃くて驚く、という内容になっている。

本作は、2006年から2010年という長期間に渡ってレコーディングされた音源をまとめたもの、という点では”Michigan and Arcturus”と同様だが、こちらのレコーディングはソロアルバムを作るためという目的が明確だった、という点が大きな違い。
作曲は全てマッケイ自身、共演者はイギー・ポップを筆頭に、マイク・ワット、アイルランドのノイズインストゥルメンタルバンドESTEL、Carnal Kitchenのオリジナルメンバーマーク・ランパート、そしてもちろんRadon勢と、前作と打って変わって多岐にわたる。

なお、マッケイはESTELとはマイク・ワットの紹介で知り合ったらしく、2009年にマイク・ワット共にセッションアルバム"STEVE MACKAY / MIKE WATT / ESTEL ”Untitled Volume 1"を出している。

プロデューサーは、Radon勢で前作にも参加していたKoonda Holaaのリーダー、カミルスキーとこれもRadon Ensembleの中心人物で、ポルトガルでのレコーディング作業にも参加していたらしいジョナタン・サルダーニャだが、マッケイに依れば半分くらいの曲で共演しているマイク・ワットの影響も大きかったという。

ジョナタン・サルダーニャ
http://jonathanulielsaldanha.com
カミルスキー
https://www.facebook.com/Koonda-Holaa-97074156760/

が、本作は何よりもマッケイ自身が主導権を握ったアルバムであり、アヴァンギャルド系に留まらない幅広いソングライティング能力を楽しませてくれる。

ちなみに、前作のプロデューサー、スコット・ニーデガーはエグゼグティブ・プロデューサーという肩書きはもらっているが、その幅広い人脈でミュージシャンやスタジオ手配を手伝うことに貢献した、という形の参加だったようで、音楽的には特に仕事はしていない。ただし、このアルバムのブックレットを執筆していて、マッケイがストゥージズに復帰する直前の時期の活動を伝えてくれる。

スタジオの手配が必要だった理由は、ブックレットのマッケイ自身の文章にもあるとおり、本作のレコーディングがストゥージズのツアーの合間に行われていたから。例えばストゥージズがダブリンでライブを行った2008年6月にはESTELの面々とレコーディングし、フランス&モナコツアーが行われた2010年7月にはモナコに近いフランスのエズという村で録音している。
そういう風にツアー先で時間が空くとレコーディングをする、というものだったので、それを可能とするためにニーデガーの人脈が役立ったらしい。
そんな多忙な中でのレコーディングは2010年7月に終了し、ほとんど間を空けずに2010年8月2日に発売されている。

なぜマッケイがそこまでしてソロアルバムの製作に拘ったのかというと、ロン・アシュトンとの確執から再結成ストゥージズのアルバム”The Weirdness”のレコーディングから閉め出されたことがきっかけとなったらしい。
マッケイ自身がそう断言しているわけではないが、そう思わせる発言を2つくらいのインタビューで語っている。

マッケイ自身のヴォーカルが楽しめる#2 Dead Chevysも悪くないが、ウリはやはりイギーが参加した#7 The Prisnor。正式な契約を締結していない無償参加なのでイギーは「Ypsi Jim」と名乗っているが、これは出身地のイプシランティ(Ypsilanti)から取った名前だそうだ。
なぜ、イギーが無償参加をする気になったのかは、バイオグラフィーを参照していただきたい。

スティーブ・マッケイ バイオグラフィー(6)

この曲は”Préliminaires"に収録されていても違和感ないような仕上がりで、この2人が揃って仕事をする時間がもう少しあれば良かったのになあ、と惜しまれる。
”Préliminaires"でも感じたが、イギーのバリトンヴォイスはホーンセクションと非常に良く合う。この曲でもイギーが1コーラス歌い終えてからサックスのソロに切り替わる瞬間は結構ゾクッとくる。
イギーがホーンと渡り合った曲は、ソロでは”Préliminaires"くらいしかないが、これはイギー自身がホーンと自分のヴォーカルは合いすぎてロックとはちょっと離れるかも、と思ってわざと距離を置いたのかも知れない。
ちなみにこれは7インチシングルでも発売されている。

https://www.discogs.com/ja/Steven-Mackay-United-Scum-Soundclash-The-Prisoner-Sevad-Kooh/release/5594067

それとCarnal Kitchenの#10 Lost in the Fog。Carnal Kitchenとは何かとは、こちらも申し訳ないがバイオグラフィーを参照していただきたい。

スティーブ・マッケイ バイオグラフィー(1)

マッケイはこのバンドのことを「実験的な音楽をしたくて組んだバンド」と語っていたので、アヴァンギャルド系のフリーインプロビゼーションかと思ったら、意外にも"グリーン・オニオン”を思わせるR&B寄りのインスト。R&B好きには楽しい仕上がり。

そうかと思うと前作同様のアヴァンギャルド系#5 Song For Baghdadや、#8 Lament For The Leaving Of The Isle Of Lewisも控えており、前述のとおり意外に幅広いジャンルに対応した作曲力を見せてくれるマッケイだが、唯一ないのがロック調の曲。
こういう人だから逆にストゥージズに参加する意義はあったと言えるかも。というよりも、最近のイギーのソロアルバムで活かされそうな才能だったんだが。

ストゥージズでは満たされない創作意欲をぶつけた本作だけに、バラエティに富んだ内容になるのは当然だったかも知れないが、それだけでなく、2010年8月に本作が発売されるとその月のうちにESTELのアイルランドツアーに参加し、さらに11月から12月にかけてRadon勢(Radon Emsanbles)をバックに従えて初のソロツアーをヨーロッパで行っている。

まさに創作意欲と表現意欲の塊のようになっていたこの頃のマッケイだったが、実は、このアルバムが発売された頃には、再結成ストゥージズに新たなバンドマスターとして帰還したジェイムズ・ウイリアムソンにより、徐々にその意欲が満たされる環境がストゥージズでも整いつつあった。
そんなわけで、イギーが休養宣言を出す2013年まで、マッケイは改めてストゥージズをファーストチョイスとし、ソロによるレコーディングは影を潜めることになる。

ところでこのアルバム、まだ新品が手に入る。
配給レーベルはRadonではなくニーデガーの新たなレーベル、Polygot。
Radonは実質マッケイ専門のレーベルのような格好になったからか、2010年にニーデガーはPolygotを立ち上げて他のミュージシャンの配給やブッキングを行っていたらしい。
マッケイ没後にRadonの活動は事実上停止したようで、以前Radon Collectiveで配給していたものはPolygotで配給されているようだ。

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