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2016/05/08

Ready to Die


Wikipedia

内容はKill City
正確に言うと、予算も機材も揃った状態で録音されたKill City
同じくジェイムズ・ウイリアムソンがプロデュースしたRaw Power(実質プロデュース)やNew Valuesにも通じる部分があるが、Raw Powerほどエッジではなく、New Valuesほどソフトでもないので、やっぱりKill City。
スコット・サーストンも参加しているし(#9の”Beat that Guy”でキーボードを弾いている)。

自分も諸兄同様Kill Cityを気に入っているので、Kill City風味の本作ももちろん気に入っている。

本作にあってKill Cityに無いのはそこはかとない哀愁。勢いはあるのにどこか物悲しい感じが漂うBurnから始まり、スコット・アシュトンが作曲者に名を連ねるThe Departedでしめやかに終わる本作は、ジャケット共々“滅びの美学”的なものを感じさせてくれる。
そういう美学を力むことなく提示できるのが経験を重ね倒したベテランの余裕なんだろうが、聴いていると「男は死ぬと分かっていても戦わねばならない時がある」「もののふの道と云ふは死ぬことと見つけたり」という言葉が自然と脳裏に浮かんできておっさんのボンクラ魂が点灯するという、世にも珍しい作品に仕上がった。かつての自分を思い出して点灯するのではない、リアルタイムの自分の中で点灯するのだ。

アメリカでも評価は高く、ストゥージズのアルバムとしては初めてビルボードのTop 100にチャートインしている。

5/19訂正:"Raw Power"が52位にチャートインしている。ケアレスミス。

http://www.billboard.com/charts/billboard-200/2013-05-18

ヨーロッパでは当然のことながら各国チャートにチャートイン。

http://www.officialcharts.com/search/albums/ready%20to%20die/

http://www.lescharts.com/showitem.asp?interpret=Iggy+And+The+Stooges&titel=Ready+To+Die&cat=a

ちなみにKill Cityにあって本作に少ないのが疾走感あるいは焦燥感。これはベテランの余裕と引き替えに失ったと言えるか。

自主製作いえどもKill Cityと比較すれば、今のストゥージズには環境整備のための潤沢な予算はあるので当然ながら仕上がりはメジャーレーベル在籍時と遜色ない。
配給を引き受けたファット・ポッサム社はもともとブルースやクラシック・ソウルを扱うレーベルだったそうで、アトランティック・ソウルの雄、ハイ・レコードの再発をしていたりするが、途中からオルタナ系も扱うようになり、その流れでストゥージズも引き受けた模様。カタログを見るとT.Rexの後期作品やダイナソーJr、ブラック・キーズなんかも載っていたりする。

http://fatpossum.com/artists/t-rex/

アルバム発売の告知動画で「音を送ったのはひと月前だぜ、ミシシッピ時間てか?」というギャグが出るが、これはこの会社がミシシッピ州にあるから。

http://ro69.jp/news/detail/81200

さて、この作品、諸兄ご存知のとおり、ウイリアムソン復帰以外にも様々なドラマを経て完成している。
まず、改めて書くとロン・アシュトンが亡くなり、ジェイムズ・ウイリアムソンが帰還
インタビューでイギーが
「ロン・アシュトンと共に“ザ・ストゥージズ”は死んだが、“イギー&ザ・ストゥージズ“はまだあるんだ」
と表明しているが、バンド名として公式にこれを採用したのはRaw Powerが最初で最後だったから、その作品の中心人物だったウイリアムソンが帰ってきた、ということで「さよなら、ロン、おかえり、ジェイムズ」という意味があるのだろう、多分。

ウイリアムソンは40年ぶりくらいにストゥージズに帰ってきて、しかも一線に復帰するのも30年ぶりくらいなのに、あっさりバンドマスター的地位に収まってしまったが、ストゥージズの大株主イギーにヘッドハントされて、ソニー・エレクトロニクスの副社長からストゥージズのCEOに就任したと考えると納得がいく。マネジャーとしても優秀ということでヘッドハントされたということだろう。何となくアメリカっぽい転職

そしてスコット・アシュトンが健康問題によりツアーを離脱。幸い本作には参加しているが、リリース後のツアーには参加していない。当時のライブ写真や映像を見るとドラムセットの向こうに写っているのはトビー・ダミット(2011年のツアーでも代役)。ちなみにダミットは本作にパーカッショニストとして参加している。

さらに先にも出たギャグの原因でもある、メジャーレーベルからの離脱
イギーのソロ作品Aprèsが発端になったヴァージンEMIからの離脱は、普通のバンド仲間だったら
「ソロの騒ぎに俺らを巻き込むなよ」
と喧嘩別れの空中分解になるところだが、そうはならなかった点に腐れ縁な雰囲気と、株主とCEOの関係ならそうなるかというビジネスライクな雰囲気が同時に漂う。

しかしストゥージズを名乗るバンドに安息の日というのは訪れないのかね。

ライナー、NME、WIkiといったソースでは、本作のレコーディングは、バックがロサンゼルスやベルリン、ヴォーカルはイギーの自宅があるマイアミ、とあちらこちらで行われたが、製作拠点はカリフォルニア州バークレイ。ウイリアムソンの自宅(サンノゼ)から比較的近い。こんなところからレコーディングに最初から最後まで付きっきりだったのはおそらくウイリアムソンだけと推測され、株主からバンド以外の現場をも任されているCEOという雰囲気が漂う。

イギーがここまで作品を人任せにするのは久々だが、ウイリアムソンの手腕をそれだけ信用しているということだろう。結果、ウィリアムソンは歴史的なバンドを2度に渡って救うのみならず、レコーディングも成功させるという偉業を成し遂げた。

ところで本作はYoutubeに誰かがフルでアップロードしているが、かなり音が悪いので、スコットへの遅い香典と思って素直にお金を出して買った方がいいと思う。

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