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2016/03/30

Blah Blah Blah


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音楽的に不作だった頃のボウイがプロデュースし、イギー自身も「あれは名前以外はボウイの作品」なんて発言をするくらい嫌っているせいか、当時の売れ行きに反比例して近年の評価が低いアルバム。
個人的には、初めて国内盤で入手できたイギーの新譜という結構思い出深い作品なので、そこまで邪険にしないで欲しいなあ、と思ったりする。

今となっては多少古びた部分もあるにしろ、さすがは華やかなりしボウイブランド、商品として隙なし。シングルカットされたカヴァー曲のReal Wild Childもどんぴしゃりで、イギー最初で最後の全英チャートベスト10入り。曲調もバラエティに富んでいて飽きがこないし、表題曲なんかライブ向きのせいか割と演奏してくれてるイメージもある。スティーヴ・ジョーンズのギターの聞かせどころもちゃんと作ってるし、なんでここまで評価が低いかなあ。

イギーのインタビューによれば、ボウイの自宅に遊びに行った時にボウイから退屈なデモを聞かされてうんざりしたので「デモなら俺もあるぜ」と掛けてみたところ、最初は乗り気じゃなかったボウイが「これはいい。スタジオも安く貸すし、プロデュースも引き受けるからレコーディングしないか」と言い出して、イギー5年振りのメジャー復帰に繋がったのだという。

何でボウイが乗り気じゃなかったのかというとイギー曰く「俺が低音でホッホって唸ってるだけの曲をまた聞かされる、と思ったんじゃないか」。“また”ってことは前科があるのか。

イギーと違って身も蓋もない言い方をすると、ボウイは当時のイギーに関して、ヴォーカリストとしてはともかく、ミュージシャンとしての能力は疑っていたと思われる。悪気はなかったろうが、おそらくレコーディングも子供扱い的な進行だったかも。イギーがこのアルバムを嫌っている一因はそんなところじゃないだろうか。

ところで、イギーが聞かされたボウイの退屈なデモとは、時期的にNever Let Me Downの事と思われる。イギーのBang Bangが収録されているのは「あれ?イギーの曲って中々いいじゃないか」と思ったボウイが旧作を聞き直したからかも知れない。

Zombie Birdhouse


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Partyからあまり間を置かずに製作されたアルバム。
個人的にはジャケットとタイトルが気に入っている。

「なんで前作ではできなかった?」というバラエティに富んだソングライティング力をいきなり見せてくれる内容。この続きがBlah Blah Blahというのも違和感ないんだが、あのアルバムはイギー自身が嫌っているんだっけ。
イギーのヴォーカルが投げやりになるような瞬間はあるものの、アリスタ三部作よりもイギーに寄り添った感じのプロデュースは中々に心地よく、露骨に時代に即しすぎて今聞くと恥ずかしくなる、というミスが見当たらない。予算がなくて時代に即しきれなかった、という部分も寄与しているかも知れないが。

曲調がバラつきすぎていたり、デモ音源みたいなのも混じっていたりして傑作と呼ぶには厳しい。
しかし、Brick by BrickもAmerican Caesarも一日にして成らず、ということを証明してくれる拾い物の習作ではある。

2016/03/29

Party


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イギーのアリスタ三部作の最終作
全英、全米ともにセールスも不調で評価も低いが、聞いてみると案外イケる。
アリスタ幹部の介入を受けて無難にまとめてみたら、81年の製作にして80'sアレンジが影を潜めたという怪我の功名。少なくとも「うわ、しょっぱ」という瞬間は大分減っている。
そして裏ジャケが鋤田正義。今回のボウイ人脈は音じゃなかった。

苦笑ポイントとして良く挙げられる懐メロ・She of Loveのカヴァーだが、イギー自身がAprèsなんていうシナトラやエディット・ピアフのカヴァーをフランスで大ヒットさせてしまった昨今ではむしろ、「誰だか知らないが目端が利いてるじゃん」と言いたくなる出来で、アリスタ介入に苛ついたイギーの嫌み「ヒットさせたきゃフィル・スペクターでも連れてこい!」もスペクタープロデュースの懐メロアルバムもアリだったかもなあ、という気がしてくる。あのバリトンヴォイスは懐メロでも十分生きる。スペクターはあと6年くらい塀の中だろうから、もう実現は無理だけど。

右腕捜しに長けたイギーの今回の右腕指名はパティ・スミスの元右腕アイヴァン・クラール。
おかげで曲もそれほど悪くない。デヴィッド・ボウイがNever let me DownでBang Bangをカヴァーしただけはある。あのアルバムも厳しい出来ではあったけど。

案外イケるが、「イギーが作るとなんだかんだでその作品はちょっとフリーキーになる」という、狙ったわけでもないのに醸し出される個性も消えてしまったので、確かに「イギーじゃなくてもいいじゃん」という作品ではある。悪くはないが通して聞くのは退屈
そして、このアルバムの後、イギーは雌伏期に入る。以前の低迷期と違って、結構健康的な生活を送っていたらしいけど。

Soldier


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1曲目のLoco Mosquitoのやっすいピコピコアレンジには寒気がするが、これも80年代の業として許して欲しい。ピコピコしないテクノ・ビッグビートも進化したテクノロジーの産物なのだよ。
今回のイギーの右腕はシド・ヴィシャスにピストルズを追い出されたグレン・マトロック (Wikipedia)
彼の名前がやたら大きく表記されるアルバムだが、実はプロデューサーのパット・モラン (Discogs)もそこそこ大物。

自分は「このアルバムのオーバープロデュースな仕上がりを気に食わなかったイギーはウイリアムソンと絶縁した」と覚えていたのだが、賢明なる諸兄はご承知のとおり、ウイリアムソンはアルバム製作中にクビになった、というのが正しい。
クビの原因は「オーバーダブにオーバーダブを重ねようとして激怒したイギーに追い出された」「ゲスト参加したボウイと衝突した」等々書かれてはいるが、原因は1つではなくて色々重なってクビになったのだろう。

4/27訂正
最近読んだKQEDのインタビューによると、ウイリアムソン側から見た場合、以下のような事情があったらしい。
・イギーはソングライティングをグレン・マトロックやバリー・アンドリュース(XTC)と行っていたが、そのことについてウイリアムソンは聞かされておらず、しかも彼が不在の間に行われていた。
・ウイリアムソンはそんなマトロックやアンドリュースとは反りが合わず、毎日イライラしていた。
・最後にボウイがやってきて、沈んだスタジオを盛り上げようとどんちゃん騒ぎのインスト合戦を開始し、仕事を進めたかったウイリアムソンの堪忍袋の緒が切れた。
・これでイギーとウイリアムソンの間で言い争いが起こり、ウイリアムソンは“やってられない”とスタジオを去った。
・そういうわけで、ウイリアムソンから見るとイギーから一方的にクビを告げられたのではなくて、自分がばっくれたことをイギーが追認した、という感じらしい。
・ちなみウイリアムソンがプロデュースを引き受けたのは、New Valuesと同じく金のためで、音楽業界から足を洗うのは既定路線だったらしい

これでウイリアムソンは(予定どおり)音楽業界から足を洗い、大学に入り直してIT業界へ転身する。

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2016/03/27

New Values


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Kill Cityを「Raw Powerの続編」と書いたが、このアルバムはそのまた続編
The Idiot、Lust for Lifeと比較すると、音圧の低さが尋常でないが、80年代という時代の業として見逃してあげて欲しいところで、ある意味「ファンならわかるアルバム」

内容は悪くない。
Raw Powerからの流れで聞いてみると、むしろこっちの方が正常進化形で、The IdiotとLust for Lifeは突然変異だったことがよく分かる。ジャケットデザインもおそらくRaw Powerを意識した仕上がり。
当時のNMEでも今のAllmusicでも評価は高く、収録曲「I'm Bored」なんて、今でもたまにライブで演奏しているのを見かける。

クレジットを見る限りでは、製作者はイギー、ジェームズ・ウイリアムソン、スコット・サーストンの3人だけという少数精鋭。まさに"精鋭"と呼ぶのにふさわしいメンバー
アルバムのライナーノーツとAllmusicでは、ソングライティングをほとんどイギー単独で行っていることになっているが、Wikiでは後半の曲のほとんどがサーストンとの共作。
おそらくWikiが正しいと思う。
イギーの音楽キャリア前半では、サウンド面に関してはほぼ他者(アシュトン兄弟、ウイリアムソン、デヴィッド・ボウイ)の影響下にあることを考えると、ここで突然ソングライティング力が向上したというよりもLust for Lifeで作曲に関わり、ジャクソン・ブラウンやボニー・レイットの右腕として高い評価を得ることになるサーストンがコンポーザーとして手伝ったという方が自然だ。ちなみにサーストンはRaw Powerでピアノを担当している。(2016/9/4訂正・していない。弾いているのはデヴィッド・ボウイ)

ただし、前述したように、音圧の低さと80年代を感じさせるしょっぱさ、そして哀しいことに「ロックファンが求めるのはこっちじゃない、突然変異の方」というイギーのキャリア独特の齟齬が、この作品を歴史に埋もれさせてしまった嫌いはある。暫時進化のこちらじゃなくて、時代を飛び越えた突然変異がソロキャリア最初期に登場してしまった故の不幸
デヴィッド・ボウイってのは大したプロデューサーだったんだなあと、当たり前のことを痛感するが、天下のボウイにうだうだ言えるレーベル関係者はそういない、という点も歴史に残った先行2作に差を付けられた要因か。
今となっては、Kill Cityと同じように、ウイリアムソンがリミックスしてくれないかな、ということがささやかな望みではある。リマスター盤は出てるけど、リミックス盤ではないんだなあ。

4/27追記
KQEDのインタビューに依れば、ウイリアムソンはこの時期すでに音楽業界から足を洗うつもりで、コンピュータ・エンジニアになるべく大学に通っていたが、金が必要だったのでプロデュースを引き受けたのだそうな。

Kill City


Wikipedia

Raw Power (Wikipedia)の続編と言ってもいいようなアルバムで、思わぬ拾い物と喜べるとともに、Raw Powerの実質的な製作者はジェームズ・ウィリアムソンだったと音から確認できるという歴史的な一面も持つ作品。
勿論、ストゥージズの個性とメンバー間の方向性が一致したからRaw Powerは傑作になったわけだが、それでも中心人物がストゥージズをどうするつもりだったのか、というロック史上のifを楽しむこともできる。
答えとしては「ボウイがイギーの中に見ていた可能性はウィリアムソンも気づいていた」ということになるか。ただ、ストゥージズの他のメンバーが、ボウイとウィリアムソンが気づいていた方向性を承諾していたかといえば、かなり怪しい気はする。

このアルバム製作時のイギーは薬物依存から脱却するためにサナトリウムに入所して療養生活を送っていた。Raw Powerという納得いく作品をリリースしながら、メンバー間のドラッグ渦が原因でストゥージズが空中分解してしまったことをさすがにまずいと思ったらしい。
イギーは歌入れのためにサナトリウムからスタジオに通っていたそうで、そのためか、このアルバムに関しては
「ウィリアムソンが作って、俺は歌入れしただけ」
と語っている。
だからこのアルバムはイギーとジェームズ・ウィリアムソン両方の名義になっているという律儀な話。普通は有名な方の名前だけにするよなあ。
結局メジャーレーベルからは発売できず、The IdiotLust for Lifeが評判をとった後に、LAのBomp! というインディーレーベルから発売された。元々はデモテープ音源そのままという音質だったが、今はウィリアムソン自身がリマスターを手がけたバージョンも発売されている。

4/24追記
Ready to Dieの記事を書こうと思って、ウイリアムソンのWikiをちゃんと読み直したら、この作品はジョン・ケイルにプロデュースを依頼していたらしい。結局、引き受けては貰えなかったわけだが、個人的にはロックミュージックのプロデューサーとしてはウイリアムソンの方が優れていると思うので、正解だったと感じる。

Lust for Life


Wikipedia

The Idiotからさほど間を置かずに登場したソロアルバム第二弾
当時のボウイとイギーの創造力が如何に凄い状態だったかがわかる。
ストゥージズのフロントマンとして世に絶望と怒りを叩きつけてきたことが過去になったことを宣言するかのような前向きな歌がずらりと並んでいるからか、CMで耳にするイギーの曲は大体ここに納められている感じ。最近ではトヨタ・ノアのCMで「The Passenger」が流れていた。
クルマに似合わないといったらないが、イギーの懐がそれで暖まるのであれば目を瞑ろう。

新作「Post Pop Depression」がこれとThe Idiotのリブートだったことはイギー本人が認めていて、それが目指したとおりに再現されているところがオヤジロックファンの号泣ポイント。
と同時に、そいういう作品が全英アルバムチャート初登場 5位(イギー史上最高位)であることを考えると、実はロックファンのほとんどがイギーに求めていたのはストゥージズでなくこっちだったんだろう。

The Idiot


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言わずと知れたイギー・ポップのソロデビューアルバム。
詳しい説明はWikiに譲るが、ストゥージズ幻想に縛られていたイギーの新しい扉を開いた作品にして傑作。
既にセックス・ピストルズが登場してストゥージズを「歴史上の存在」にしつつあった頃だけに、イギーのキャリア的にストゥージズを「過去の存在」にしたのは正解。
「30過ぎてもヒップスター」というキャリアから逃れることにギリギリ成功したから、今のイギーがあると思う。

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