リトル・シスター
今回の決め台詞「誰かの夢が失われたようだね」
村上春樹のチャンドラー翻訳第三弾。
個人的には彼の著作じゃなく翻訳物ばかり読んでるなあ、最近は。
清水俊二訳「かわいい女」を読んでいるが内容は全く覚えていない。
巻末の解説では訳者が「誰が誰を殺したかとか、人間関係の説明があやふや」と指摘しているが、込み入っている割に説明不足のストーリーを理解しきれなくて覚えていないのかも知れない。
巻末の解説では他に「この小説はチャンドラー自身が嫌っていたせいか世間的な評価は低い(でも訳者は気に入っている)」「チャンドラーは売れっ子脚本家だった」「翻訳時に登場人物の兄弟関係を改めた」「登場するギャングの1人はバグジー・シーゲルがモデル」等々の情報が載っていて面白い。
チャンドラーがハリウッドで脚本家をしていたのは知っていたけど、売れっ子だったのは知らなかった。あれだけ決め台詞を量産した人だと思えば当たり前か。
解説ではやや混乱したこの小説があったから「長いお別れも」存在するのだ、と結論づけているが、自分なりにこの説明を解釈すると、早い話チャンドラー自身が「このままじゃいけないな」と反省して、人物関係とストーリーを整理した上で華麗な描写で物語る緻密な傑作「長いお別れ(ロング・グッドバイ)」を執筆した、という事なんだろうか。
その後、奥さんを亡くしてしまったこともあって半引退した後に、大分薄くて毛色も違って物語もなんだかあやふやな作品「プレイバック」1作だけを上梓してチャンドラーは永眠してしまうわけだが、奥さんの死だけでなく「長いお別れ」のストーリー整理も重荷だったことも半引退の原因だとしたら、やっぱり整理して書くのは苦手なんですかね。
ところで今回の新訳もタイトルを変更しているが、訳者に依れば「旧題の『かわいい女』だと、原題が差している登場人物とは思えなくなるので、敢えて原題に戻した」という。
個人的には旧題の方がハードボイルドっぽくていい気がするが。
やっぱりハードボイルドは娯楽小説でもあるから、そういうちょっといい加減な感覚的なところも残しておいていいんじゃないかなあ。そういういい加減さがあったから、チャンドラーの「謎解き」があやふやでも見逃されてきたんだろうし。
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