ハードボイルドではないね
デイン家の呪い(新訳版)(ハヤカワ・オンライン)
ポケミス版は読んでいるが内容は全然覚えていなかった。
元々が5つの独立した短編を1つの長編にまとめ直したものなので、次から次へと新しい人物が登場して、次々と異なる事件を起こしたりと筋書きは結構煩雑。受動的な主人公の行動は狂言回し的で、強烈な主人公が物語と読者を引っ張っていく「マルタの鷹」や「血の収穫」に比べると印象が薄く、だから覚えていなかったのかなあ。
ハメット研究家でもある訳者の小鷹信光氏があとがきで「ゴシック調」と言っているが、超自然的運命と思わせて合理的理由で結末を迎える内容は確かにゴシック小説。ゴシック小説って元々は超自然現象を肯定しない内容だったから。
「モルグ街の殺人」由来のミステリー的に由緒正しき「フランス」がキーワードになってるし。
ダシール・ハメットはハードボイルドというミステリーのサブジャンルをいち早く完成させたことで歴史に名を残したけど、この小説を読むとローテーション的に書く小説は必ずしも「男のハーレクインロマンス=ハードボイルド」だけじゃなかった事がよく分かる。
ハメットの後半生は映画化権の売却で収入が安定したり、晩年は赤狩りにもあったりして「書けなくなった」ことで有名だけど、新作は常に興隆を迎えていたハードボイルド小説を期待されていたろうから、自分の模倣に陥ってしまうことを嫌がっていたのかも知れないなあ。
オリジネイターとして消えていったと考えればある意味天才。こつこつと自分を磨き上げていったチャンドラーとはそこが違うのか。
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