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2009/06/15

ジョブズの本ではないんですが

メイキング・オブ・ピクサー/創造力をつくった人々(ハヤカワ・オンライン)

「トイ・ストーリー」で広くその名を知られる以前のPixar社史というと、Appleファンの間で「ジョブズがルーカスから買った」ということが知られているくらいだったが、その知識の空白を埋めるのがこの本。どこで誰が創設し、前トイ・ストーリー時代は何をしていたのか、ということを丁寧に追っている。

ほとんど無から登場してアニメーションの歴史を根底から覆してしまったように見えるこの会社。しかし、この会社の歴史は、3DCGというものの誕生と直接的に関わった人たちが、これで長編映画を作るんだという野望を実現するために関わってきた苦闘そのものだったということがよく分かる。

ストーリーの中心人物はエド・キャットムル。まあ、途中からアニメーターのジョン・ラセターが主人公になっちゃうんだけど、創設者は彼。
彼はユタ大学に在籍していた時に3DCGというものの着想を得て、実際に作成までしたのだという。
当時のユタ大学はコンピュータ学界の梁山泊だったそうで、そのためにこの章ではちょい役ではあるものの、ジョン・ワーノック(Adobe創設者)だのジム・クラーク(SGI、ネットスケープ創設者)だのアラン・ケイだのといった錚々たる面々が登場する。ほとんどの人たちはここで名前が出るだけだけど、アラン・ケイはPixar買収の時にジョブズに話を通してくれたそうな。

その後の苦闘話は面白い。やっぱり伝記物や社史物でで一番面白いのは「どうやって危機を乗り越えたか」という部分ですな。
だから本来、トイ・ストーリーで成功したあとは急速につまらなくなって収束するはずなんだけど、そんなことがないのがこの本の面白いところ。
先にも書いたが、ここのオーナーはスティーブ・ジョブズ。この劇場(激情)型経営者が要所要所でストーリーを盛り上げる。プレ・トイ・ストーリーの苦闘時代は役員とのすったもんだや赤字続きにいい加減嫌になっての売却交渉(トイ・ストーリーの出来とディズニーの広報活動における凄まじい社会的影響力を見て思いとどまったという)で、成功してからは大コングロマリット・ディズニーとの丁々発止のやりとりで。
終わってみると「ジョブズって面白いなあ」という筋違いな感想を抱いている自分に気がつく本。
Pixarが成功したのは、この素晴らしすぎるオーナーがApple仕事で忙しくなって代表としての対外交渉以外ではそんなに会社に関わらなくなったから、とはよく聞く話ですな。

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