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2008/02/04

オン・ザ・ロード

(河出書房新社)

話題になった新訳版をやっと読了。
よく言われる「流れるような文体」を日本語化するとこうなります、というリズミカルな名文に仕上がった訳は
「ああ、このリズムがなかったから旧訳は『一生懸命』読まなきゃいけなかったのか」
ということがよく分かる。
著者は嫌がるだろうけど、パッと開いたところから読み始めてもこのリズムに乗っていける。世界中のバックパッカーが愛するのは、こういった幾分リーズナブルとも言える部分だったのかも知れないな。

しかし、この疾走感を支えるディーン・モーリアティが静かに主人公の前から消えていく第5部は、執筆当時はもちろん出版当時でも存命だった彼の末期を予見しているようで泣けてくる。
彼に感情移入する読者はあまりいないと思うけど、ヒップスターになった以上は滅んでいく運命を逃れられないのか、と感じるのは自分が年を取った証拠かな。主人公も「そろそろみんな落ち着いてきたんだよ」なんて言って「最後の旅」に出かけるし。

確かに当時の価値観で語られている事も多いから、今になってみると違和感を感じる部分もある。
けれど当時のアメリカ、
「20万円も用意すれば、立派に走る中古車が買える」
「定職に付かなくても、何となく食っていける」
という経済状況に追いついた今の日本だから、共感できる部分も増えたんじゃないかとも思う。少なくとも翻訳が出版された当時、1959年の日本よりも。

読むのに前知識が必要となる小説じゃないから、学生の教科書にして欲しいよなあ。
そうすればネット難民の中から、次のケルアックが生まれるかも知れない。

ところで、この小説が発表されて30年くらい経ってから、ケルアックの盟友、ウイリアム・バロウズが「デッド・ロード(Place of the Dead Road)」という正反対とも言えるタイトルの長編をモノにしている。内容面も正反対。「結局、世の中は変えられない」という諦念に満ちている。
この小説、というかタイトルを思いついたとき、ケルアックの傑作はバロウズの念頭にあったんだろうか。

「バロウズ・ブーム」の時に思潮社から翻訳が出ていたけど、もう絶版らしい。自分もブームにノセられて買ったクチ。しかし翻訳した人が山形浩生にボロクソ言われている人。内容としても苦労して古本を探すほどのものかといわれると、ちょっとそれはどうだろう、という出来。新訳が出たらどうぞ、、、無理かなあ。

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