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2006/03/07

ダーウィンの悪夢

DARWIN'S NIGHTMARE(オフィシャルサイト)

フランス映画情報、配給情報(Unifrance)

BS世界のドキュメンタリー(NHK)で鑑賞。
タイトルの元ネタはビクトリア湖がその豊かな生態系故「ダーウィンの箱庭」と呼ばれていた事から。
ここにどこかの間抜けがナイルパーチという害魚としても有名なアカメの一種を放流したところ、そいつが土着の魚を食い尽くし生態系を破壊してしまった事が「悪夢のようだ」ってことらしい。

このナイルパーチ、日本のスーパーでもその切り身が白スズキとかアフリカスズキとか称して売られ、一時期虚偽記載として話題になっている。今は「ちゃんとナイルパーチと表記しなさい」と農林水産省辺りから指導が出ているようだ。
実際に映画の中でも「切り身は欧州と日本向けに輸出されている」という台詞が出てくる。

つまり結構イケる味。
お陰でタンザニアではナイルパーチの輸出が一大産業となってしまった。
しかし漁業関係者なら理解出来るように、カネになるものをむざむざ自分の食用にする事など無い訳で、結果的にこの魚の切り身はその値段からも地元民の口に入る事はなく「アタマとアラ」だけが卸される。
これは油で揚げて売られるそうだが、どうも消毒ということらしい。
早い話その加工工場に卸されるアラは既に腐りかけていて、アンモニアガスを発生するような状態。そのガスに眼球を溶かされた女性も登場する。

輸出を請け負う業者はロシア系らしいが、空荷でアフリカくんだりまで向かうのも勿体ない話なので、内戦国向けの武器を積み込んで出発し、それを密輸業者に渡してから魚を積み込む。
これと飛行機が旧式という事が相まって運賃が安いようだ。

タンザニアの産業大臣は、ビクトリア湖の生態が破壊されている、というドキュメンタリーを見せられても動じることなく
「破壊されてないところだってあるはずだろ」
と語り、EUの代表団も発言を後押しする。
切り身の工場主は新聞記事を読んで
「困ったもんだ、また飢饉だってさ、雨が降らないんだ、来年は米の値段が上がるなあ、誰も買えないくらいに」
と語り、取材者のそうなったらみんなは何を食べればいいのか、という質問には
「海外から買うんだろ、あとは国連とか」
と他人事のように応える。

本来タンザニアは稲作を中心とした農業国家だったらしいが、ナイルパーチで儲けられると聞いて内陸部の働き手となるべき世代の農民は漁民になるべくビクトリア湖に大挙して押し寄せ、農村は崩壊。
そんな彼等が湖畔の町に滞在するカネがある訳もなく、孤島に集団で住み、彼等を頼って売春婦も集まる。
それがHIVの流行を呼んでしまい、感染者は農村に帰って(病気になったら動けるうちに帰らないとのたれ死ぬ、という台詞がある)更に広げてしまう。

元から漁民だった人たちもこの流れに乗ってしまったため、やはりHIVが流行し、大量の死者が出た挙げ句、遺された子供達は町に出てホームレスとなり、捨てられたナイルパーチ輸出容器を溶かしてシンナー替わりに吸う。

誠に暗澹たる気分にさせられるドキュメンタリー。
そういう場面を選んで繋げたからだ、という見方も出来るが、これを見て欧州やタンザニア政府を非難したり、もうスーパーに並んでいるナイルパーチを買うのはやめよう、と決心するのもちょっと違う気はする。

この産業が無ければ食糧不足が深刻なタンザニアが余計に追い込まれるかも知れないという事実もある訳で、これは原発誘致や米軍基地移動に対して対象となる自治体から反対意見ばかりでなく「国からの補償金が出るし、労働者も集まってくるから町が潤う」と賛成する人たちが出るのと通じる普遍的な話だと思う。比べるにはちょっと強烈すぎるが。

それに「武器の密輸に使われている」という事実はタンザニア国内メディアで報道されているそうで、飢餓問題も政府は否定しているが、国内メディアでは「嘘付くんじゃない」という反論もちゃんと流れている。
つまりある程度の言論の自由が保障されている国、ということでもあるわけで、これよりもひどい国はアフリカ大陸に限らずもっと沢山ある。

この問題に対する回答は、実は映画の中の登場人物が語っている。
武器の密輸に関わっているという事に薄々感づいているロシア人パイロットが語る最後の台詞がそれで、
「全ての子供には幸せになって欲しい、、、、だが、どうして良いのか私には分からない」
というもの。

誰だって生きて行かなくちゃならない。それが他者を傷つける事になっても、という社会構造は昔からず〜っと続く人類の業。
どうすればよいのか、なんて勿論自分にも分からない。

じゃあこの手のドキュメンタリーというのは無駄か、というとそんな事はない。
少なくともこういう事実があるのだ、という知識を頭の中にストックしておくのは大事な事だ。

だた「釣るためにブラックバスを放流する」間抜けに見せるにはいい映画かも。
いや、「タンザニア政府はけしからん」とか浅い見方をして終わりかな。その程度しか考えられないから、あんな食えもしない魚を放流するんだろうし。

残念ながら日本版のDVD化はまだらしい。

6/24追記・出ました。
ダーウィンの悪夢 デラックス版

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