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2006/02/13

iCon・スティーブ・ジョブズー偶像復活

(Amazon.co.jp)

ジョブズCEOの新しい伝記『iCon』(HOTWIRED Japan)

怠惰な休日の午後を目一杯潰すのには最適な分量を誇る1冊。
なんといってもシリコンバレーの波乱のプリンス、スティーブ・ジョブズの伝記であるからして、ハイテク業界の情勢に興味の無い人でも楽しめる。

ジョブズの伝記は覚えている限りでは4冊目。
記念すべき1冊目、
「スティーブ・ジョブズーパーソナル・コンピュータを創った男」
はジョブズがAppleを追放されてNeXTを創設するまでを、
2冊目、
「スティーブ・ジョブズの道」
はNeXTにおける苦闘を、
3冊目
スティーブ・ジョブズの再臨―世界を求めた男の失脚、挫折、そして復活」(Amazon.co.jp)
はそれに加えてPixarにおける苦闘と、Appleへの復帰、そしてAppleを自分のキャリア共々ハイテク業界で再生させるまでを描いている。

そして4冊目になる、
iCon・スティーブ・ジョブズー偶像復活」(Amazon.co.jp)
先の3冊を引き継いだ「その後」を描いているのはもちろんだが、スティーブ・ジョブズ本人に焦点を絞っている点が異なる。

これまでの3冊はジョブズが創設(Apple、NeXT)、または買収した企業(Pixar)との絡みが中心で、ある意味「企業人としてのジョブズ」という面から見たものだった。
ジョブズに関しての評価は色々あるが、基本的なものは
「外ヅラは最高だが、部下になろうものなら絶対の忠誠と最大限の努力を求められ、その上指示は朝令暮改」
というもの。
先の3冊はそういった部分を定期的にまとめて各関係者の証言で裏付けるリポートみたいなところがあり、だから面白い。

とはいうものの、そういった解釈が全面的に正しいのかというと、疑問はやはり残るところで、早い話、企業人である限り顧客には珠玉のような笑顔で対応する一方で、部下に対してはある程度キツくあたることもあるのは日常。
「企業人」としての部分がクローズアップされていたこれまでの伝記では、誰でも持っている二面性が必要以上に強調されてしまった嫌いはある。
だから彼が「物書きは信用しない」という態度をとり続けているのも判る。
まあ、この頃のAppleやNeXTはジョブズとイコールだからいいじゃないか、という見方も出来るが。

一方、ジョブズ個人に焦点を当て、企業との絡みはサイドストーリーにした「iCon」では、やや極端な二面性を否定こそしていないが、
「その時のジョブズの態度は妥当か否か」
という材料まで与えられる格好になっているので、これまでの伝記よりスキャンダラスな暴露調はそれほど濃くない。
例えばApple復帰と同時に復活した「恐怖政治」にしても、それまで風変わりで放埒で歴代CEOが掌握に手を焼いてきたAppleという会社に規律を持ち込むにはある程度の強引さは必要だったことが伺えるし、Pixarでの会議中に「それは違う」とジョブズが書いたホワイトボードの図を書き換えようとした役員を怒鳴りつけたというエピソードにしても、PixarもNeXTもどん底の経営状態にあったことを考えると苛立ちが爆発しても無理はないかな、という同情の余地も浮かぶ。それだって許される事ではないにしろ。
ちなみにApple復帰以後「朝令暮改」部分は影を潜めたようだ。

また「ジョブズ個人の伝記」であるので、これまで個人的には断片的にしか知らなかった「プレ・Apple時代のジョブズ」の詳細な経歴を初めて読むこともできた。本当にインドに行ってたんだ。
他にはApple初のGUI OS「Lisa」の名前は彼の娘の名前から採ったものということは有名なエピソードだが、実はその娘自身をなかなか認知しようとしなかったってのは余り触れられてこなかった事だと思う。

彼の経歴を俯瞰する事が出来る本当の意味での「伝記」が今の時期に出た、というのは何となく意味深。ひょっとしたら今が彼の絶頂期かも知れないし。
でも「スティーブ・ジョブズの道」以降、Appleの社史も含めて彼に関連した書籍が出るたびに、その「後書き」をしのぐグレードアップを遂げてしまっているのもまた事実。
この本の後書きでは、彼はAppleをソフトウェア中心の企業に仕立て直し、ゲイツに「最後の聖戦」を挑むのかも、となんか彼のバイタリティにアテられたようなことが書かれているが、それよりも現実的なグレードアップとしてはこういう道(CNET Japan)もあるしね。

さて、お楽しみの「鬼畜エピソードの真偽」。
エレベーターで彼と一緒になった社員が「今、何をしてる?」と聞かれ、答えられなかったらエレベーターを降りる前にクビになった、という噂は本当らしい。
しかし、彼の指示を一生懸命メモに取っていたら
「聞いて覚えられない奴は要らない」
と言われてクビになったという噂の真偽は残念ながら載っていなかった。

ところで共著者のジェフリー・S・ヤングは「スティーブ・ジョブズーパーソナル・コンピュータを創った男」の著者でもある。ジョブズ研究家か。(笑)

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