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2005/12/04

草津雑感(シーズンが終わって)

手塚 聡監督退任のお知らせ [ 草津 ](J'sGOAL)

契約期間満了選手のお知らせ [ 草津 ](J'sGOAL)

ザスパ手塚監督退任(上毛新聞)

山形の最少得点記録を塗り替えるなど、ネガティブな記録ずくめでシーズンを終えてしまった草津。
最終戦は見ていないが、来期への展望が開けるものだったろうか?

個人的には手塚監督が就任時会見で
「3点取られても4点取り返すような攻撃サッカーを目指す」
と言った時点で既に不安があった。
前も書いたが、シーズン前会見にこの発言をした監督で好成績を残した事のある人物は記憶になかったからだ。
ひどい例なら、今は浦和にいる柱谷弟、とすぐに挙げられるのだが。

個人的には「攻撃サッカー」とは何を差すのかよく判らない。
その曖昧な言葉に対する1つの回答とされているのが、昨シーズン、プロビンチャのレッチェを率いたズデネク・ゼーマン。

彼が名高いのは各選手が有機的に連動して二の矢三の矢とゴールに向かう攻撃サッカーを実現してしまうからで、逆に言うとそれが出来る監督というのは数少ないという証明でもあるが、ゼーマン自身も認めているとおり、この組織的攻撃を実現するためには準備期間を多く取る必要がある。

普通のプロクラブではそんな長々と練習時間を与えて貰えない場合が多いので、名前は有名だがタイトル獲得歴はあまり無い、という人になったらしいが、スポナビだったかローマには彼を懐かしむ声が結構多いなんてコラムを読んだ事もある(ラツィオ、ローマの指揮を執った事がある)。
まあ、彼が名高いのは現役の監督でありながらユーベの選手を「薬漬け」と呼んで物議を醸し出したから、という事の方が大きいらしいけど。
あとは、彼のサッカーは選手に大変な運動量を要求するので、大抵年明けに失速するから、ということもあるそうな。それだけの運動量を選手に課す事が出来るのは、彼が指導者として、若手の育成者として優れている事の証拠でもあるんだが。

では、手塚監督の目指す「攻撃サッカー」とは何だったのか?
生では12回くらい、それもホームゲームしか見ていない自分には、はっきりとは分からなかった。
フォーメーションはどうあれサイドをえぐってクロス、というのが重要な攻撃手段という事だけは分かったが、これを以て「攻撃サッカー」と呼んでいいのかどうか、金子達人でも馳星周でもない自分は断言する事が出来ない。

もう一つの攻撃方法は、自分にはよく判らなかったがJ'sGOALの観戦記(だと思った)では、「細かくパスを繋いで相手を崩す」というものだったようだ。
ただ、これは相手のプレスを交わしてフリーの味方へパスを飛ばすだけの技量と広い視野を持った選手を揃えるか、見なくても分かるくらいにお互いの動きを習熟するまで練習を重ねる必要がある。
草津の選手の質を考えれば、現実的には後者の選択しかない訳だが、この方法は選手よりも監督に技量を要求する。
で、この手のサッカーを実現させたJリーグの監督は全盛期の磐田でIボックスを作り上げた鈴木監督と市原を率いたズデンコ・ベルデニック、今現在だったらイビチャ・オシムくらいしかいないと思う。
「レアルに勝つため」という目標の下、円熟期に達していた磐田の選手へ体力的に厳しいサッカーを要求出来た鈴木監督はちょっと違うかも知れないが。

では、手塚監督にそれだけの技量があったのか?
分からない(笑)
少なくとも全員が連動して動くサッカーを見た事があるのは、徳島、鳥栖戦くらいだったと思う。両方とも勝った試合だったが、2チームとも相手に攻めさせるカウンターサッカー型のチームだけに、ある程度好きに攻撃出来て当然とも言える相手だった。
他チームを相手にした場合、スペースには必ず誰かが潜り込んでいるとか、とりあえず前に蹴れば誰かが既に走り出しているとか、ボールホルダーが「有機的な攻撃」を開始するために必要な周りのお膳立ては乏しいもので、最終的にボールホルダーは相手のプレスに負けた逃げのパスしか出せなかった。
更に負けが混んで来るに連れて選手の顔触れがどんどん変わってしまったが、彼等は「手塚イズムを継いだ手塚チルドレン」とばかりに監督の理想と思えるサッカーをピッチ上で体現する訳でもなく、対症療法的な、下手をすると大西社長の言うとおり「5年後を見据えた」起用としか見えなかった。

翻って、シーズン末期には大崩壊するシーンも見られた守備面だが、3バック導入直後はそこそこ機能していた。
理論家肌の評論家・西部謙司が
「守備は割と組織化しやすい。難しいのは個人のアイデアが重要な要素となる攻撃の組織化。それを果たしてもフィニッシュが決まるかどうかは分からない」
と語っていた事があり、これは日本代表の事を言っていたのだが、更に続いて、
「日本代表はジーコの手柄なんだかどうか知らないが攻撃のお膳立てまでは出来ている、あとはフィニッシュで、これは日本代表だけが抱える問題じゃない」
というものだった。
日本代表と草津が比較になるのかというのはともかくとして、これを草津に当てはめると、
「守備のお膳立てだけ出来ている」
という事になるか。ただ、この守備も
「戻したからやりやすい」
という鳥居塚(だったかな)の発言から考えて、前任者の植木監督から引き継いだ守備組織とも言える。
だから、手塚監督がフォーメーションを4バックから3バックに変えて
「アクションサッカーからリアクションサッカーへの転換」
という紋切り型な発言をしたのは、自分の理想が実現出来ない苛立ちから思わず発せられたものだったのかも。
ただ、前年まで草津が行っていた事を否定するような発言ともとれる訳で、昨年から在籍した選手にしてみれば面白くなかったろう。

結局、去年までの草津を否定するのであれば、粛清と呼ばれても構わない非情な人事を敢行して全く新しいチームを作れば良かったのだろうが、監督がそれをしたのはシーズン末期。
「全く新しいチーム」を作る自信がなかったのか、ベテランに抗えなかったのか、フロントの介入でもあったのか。
ピッチ上で粛清人事が行われたのは大西体制下になってから、という事を考えると、フロントとツーカーだったベテラン達を斬れなかったのかも知れない。
となれば多少は同情の余地はあるものの、ベテラン達を自らの手中に収められなかったという点で、指導者としての限界が見えてしまう。
フロントによるゴタゴタが影を落としていた鳥栖を何とかまとめ上げた松本育夫という人もいることを考えれば余計に。

手塚監督は選手としては日本代表歴があるなど輝かしい経歴を誇り、指導者としても監督にこそなっていないがコーチは長く務めている。
だからサッカーに関する含蓄は自分なんかよりも遙かに深いものがあるだろう。
しかし残酷な事実だが「サッカーに詳しい」事と「指導者として優れている」事はまた別なのだ。
チェコ代表を魅力的なチームに仕立てた名将カレル・ブリュックナーも
「監督として最も大切なのは選手に実行させる事」
と語っている。

確かに草津の選手には、手塚監督の理想を実現するだけの技量がなかったのかも知れない。
であれば、手持ちの駒に合わせて自らの戦術や指導法といったツールをアジャストして選手に実行させる、ということも監督には求められる仕事なのであり、それが即ち監督としての「引き出しの多寡」ということになる。「魅力的なサッカー、理想のサッカーの追求」という視点から見ていい悪いは別として。

ロナウジーニョやアンリとまでは行かなくても、ポンテやマリッチをすぐに呼んでこれる浦和のようでもないチームで、監督が意識的に組織した攻撃サッカーを行わせるのは難しい。
それが出来るからオシム、ゼーマン、ブリュックナーという監督達は同業者からも評価が高い訳だし、実現が難しいからこそ「攻撃サッカー」という曖昧な言葉にサッカー者はロマンを抱いてしまうのだろう。

とはいうものの、個人的にシーズンが始まって草津が負けっぱなしだったのは、監督云々を別にしてそれほど意外でもなかった。まあ、想定の範囲内といったところか。連敗しても別に頭に来なかったし、たまに目の前で勝てば珍しいものを見られたと嬉しかった。
試合観戦に臨む自分のこういう態度を振り返ると、草津サポです、と名乗るのは難しいかなあ、と思う。

厳しい事を書いたが、サッカー批評VOL.27でコーナーキックを蹴る山口の写真が扉画として堂々と紙面を飾っている事からも、このチームへの注目度はその成績に比して大きいことが分かる。
同じ号で
「J2に上がってからじっくり力を付ける」
という方針を批判されたりしているが、JFLでフロントを含めたチーム力を育むのは相当に恵まれた背景(早い話が資金力&忍耐力)を持つチームでなければ無理。

草津が無理してJ2への階段を駆け上がったのは、人々の関心が冷めないうちに昇格しない限り資金調達もままならず、地元の話題にもならず、チームが存続の危機に陥っても地元紙か地元欄の小さな囲み記事になるかならないかというくらいの扱いしか受けない、という日本サッカー界の現状を逆説的に利用しただけの話で、非難される謂われはない。
生まれ育ったカルマとして地元の伝説的弱小クラブ・ロッチデールFCサポーターを辞められず、かといって息子にはサポーターになる事を勧める事も出来ずに悩む、という状況が立派なルポとして成立してしまうイギリスとは違うのだ。

だからこそ「落ちない」という状況を利用すべくJ2に上がったチームを応援し、消滅の危機に陥らせない、というのは地元サポとしての義務だと思う。

まあ、攻撃サッカーを目指すにしろしないにしろ、来年の草津には少なくとも一貫したチーム作りを行える人材と環境を備えて欲しい。
負け続けても、試合ごとにちょっとずつ前進してるな、という感想を抱けるような。
今年は「初戦は無茶苦茶だったが、いくらかマシになったな」というところで止まってしまった。
魅力のあるチームを作るのはその後の話だと思う。

しかし、小川をクビにするのって結構凄いな。
斎藤竜のバックアッパーって目処が付いているんだろうか?
いや、それ以前に斎藤ってレンタルだけど、来期も所属してくれるんだろうか?
樹森は最初いい選手かなあ、と思ったけど、シーズン中盤辺りから時間稼ぎばっかりが目立つようになってしまいましたな。
氏家は周囲との連携が今ひとつだった。
高須、小久保、宮川、酒井がクビになった理由はよく判らないが、同ポジションにそれなりに人数が揃っている事を考えると、単なる人件費削減だろう。

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