Push the Button

事実上の日本初お目見えとなったセカンド「Dig your own Hole
」(Amazon.co.jp)は、耳慣れたロックビートがダンスミュージックになってしまう、という点で新鮮だった。
率直に言ってゲイ、あるいは中性の匂いがしないダンスミュージックってのは初めてだった気がする。
ボノのようなオヤジ連中や、ノエル・ギャラガーのようなコテコテのロックバンド連中がこぞってケミカルとつるみたがったのも、自分のスタイルを大きく崩すことなく新しい要素を加えられそうなうえ、「間違いなくゲイじゃない」という事もあったのかも知れない。
そんなロック勢の中でもっとも深く関わった1人がご存じボビー・ギレスピー。
ケミカルのサード「Surrender」(Amazon.co.jp)発売から半年後に発売された「XTRMNTR
」(Amazon.co.jp)は、予想された事ではあったものの「ボビー・ギレスピーがボーカルをとるケミカルブラザーズ」になっていた。
その時々のおいしい音楽をつまみ食いするのが得意な彼ならではの応用編。
ただ、問題は「Surrender」よりこっちの方が違和感のない仕上がりだった事。
耳慣れたロックビートが根本にある以上、ボーカルがいる方が自然に聞こえてしまうのはやむを得ないわけで、実際「Surrender」の中でも一番普通に聞こえ、なおかつ東京ベイNKホールを盛り上げてしまったのは、テープで流れるボビー・ギレスピーのボーカル(アウト・オブ・コントロール)だったりした。
その後、目ざといボビー・ギレスピーは陰りの見えるビッグ・ビートから離れ、マンチェスターの狂人、旧友ケヴィン・シールズと組んで傑作「Evil Heat」(Amazon.co.jp)をリリースする。
お互いにそんなつもりもないだろうが、結果的に「XTRMNTR」にビッグ・ビートの掉尾をさらわれ、見捨てられた格好となったケミカル。
振り返れば傍らにいるのは才能はあるがセンスに乏しいノエル・ギャラガー。
ビッグ・ビート勢でもロック連中とはやや距離を置いていたアンダーワールドやファットボーイ・スリムに比べて、「ロック界の中心」に躍り出てしまったケミカルは、最初から食い尽くされてしまう運命にあったのかも知れない。
前作「Come with Us」(Amazon.co.jp)は、その辺を受け入れはしたものの自らの中での決着は付かなかったのか、リチャード・アシュクロフトなど、相変わらず豪華なゲストを呼びながら「ケミカル風」はやや抑え目。地味なりにまとまった仕上がりは、このバンドが終末に向かっているのではとも思わせた。
ところが、それが自分の勝手な勘違いであった事を、この新作「Push The Button」(Amazon.co.jp)は高らかに宣言する。
「ケミカル風」を捨て去った上で、「ロックとダンスを融合させたのは俺ら、であるからしてこれからはあらゆる音楽の融合を目指す」と言わんばかりに各方面からゲストを呼び集め、どこを切ってもこれからのミュージシャン連中が元ネタに使えそうな音が絢爛豪華に並べられた。
特に意外だったのが、個人的にはアンダーワールドやファットボーイ・スリムに比べて弱いと思っていたメロディ・メイク。
長く聞くと単調さが耳障りなこれまでの曲調には終止符が打たれ、これならもう有名ゲストをメインボーカルで呼ぶ必要もないだろう。そうはいってもティム・バージェス(シャーラタンズ)がいたりするが。
ケミカル再生。これならライブの2階席も盛り上がれる。
しかし、8曲目の「Close Your Eyes」はほとんどスマッシング・パンプキンズだな。なんか繋がりがあるんだろうか?
ちなみに世界先行発売となった国内版は往生際悪くCCCDなので、買うなら輸入盤で。
2/16追記・「スマパンのバラードみたいだなあ」と思った曲名を間違っていたので訂正)
12/31追記・iTMS-Jのライブラリにも追加。
Push the Button(要iTunes)
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