« 3つの失敗 | トップページ | 知ってる顔が消えてゆく »

2005/01/08

ハサン・イ・サッバー、あるいはハサン・サッバーフ

イスラム社会、または欧米では「殉教者の祖」として知られているらしいハサン・イ・サッバーことハサン・サッバーフ。
日本で彼の名を知っている人のほとんどはウイリアム・バロウズ経由での知識だろう。

バロウズ、というか一般的な伝説によると、「鷲の巣」と名付けられた砦に自ら組織した暗殺者集団と共にこもり、部下をハシシで麻薬漬けにして「天国」を見せてやった後に暗殺者として敵対者に送り込んだ。
テロリズムを自らの勢力を伸ばすために使う彼のやり口は世間的に忌み嫌われ、最後に敗北して「鷲の巣」を明け渡した後にリンチにあって死んだ、という事になっている。

「ハシシを使う人」をペルシア語では「ハシャシュン」といい、これが上記エピソードによって別の意味が加えられ「アサシン(暗殺者)」の語源になった。

後半の語源については昨日の朝日新聞コラムからの受け売り。
この連載コラムでは最近のイスラム社会の情勢を描いているが、今回は上記のような伝説と自爆テロを絡めつつ「実は伝説は間違いだった」という内容になっている。

「鷲の巣」は現在イラン政府によって発掘作業が進められているそうで、人気の観光地となっているらしいが、この発掘作業の責任者によるとサッバーフは「トルコ軍の流入を防いだ英雄」で、暗殺教団など組織していなかったという。
ハシシというのは「薬」全般を差す言葉で特定の麻薬を意味するものではなく、要するに英語で言うところの「ドラッグ」と似たような言葉らしい。
実際のサッバーフは「英雄的な軍人」であると同時に薬草で領地の人民を癒すこともした「慈悲深い領主」だったわけだ。

それがなんで絢爛豪華な伝説の持ち主になったのかというと、この地を訪れた十字軍が彼の伝説を持ち帰った際にいろんな尾ひれを付けてしまったらしい。

「暗殺者」の語源自体が間違いだった、ということがイスラム教社会とキリスト教社会の間に横たわる深い溝を表しているようで興味深い。

そういえば、おなじくトルコ軍を撃退した事で現地では英雄のヴラド・ツェペシュは吸血鬼ドラキュラのモデルになっている。
トルコに勝つものは墓の下で安眠を得られない、という事なんだろうか。
ツェペシュは慈悲深い領主では全くなかったらしいが。

« 3つの失敗 | トップページ | 知ってる顔が消えてゆく »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/47427/2504287

この記事へのトラックバック一覧です: ハサン・イ・サッバー、あるいはハサン・サッバーフ:

« 3つの失敗 | トップページ | 知ってる顔が消えてゆく »

2016年11月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

Googleサイト内検索

観戦、旅行、その他諸々

フォト